ひたちなか海浜鉄道は、湊線の延伸について2020年8月11日に国土交通省に事業許可申請書を提出し、2021年1月15日(金)付で許可を取得したと発表しました。
追記: 開業時期の表記に一部誤りがありましたので訂正いたします。(2021年1月17日10:20更新)
延伸事業が許可された区間は、現在の終点である阿字ヶ浦駅から北西方向への3.1kmで、途中駅と終端駅の2つの新駅が設置されます。2022年度から本格的に工事が行われ、2024年春の開業が予定されています。ひたちなか海浜鉄道が鉄道施設を保有し旅客営業も行う「第一種鉄道事業」として許可されました。事業費は約78億円で、ひたちなか市が2/3、同社が1/3を負担します。
延伸後の湊線は、勝田駅〜新終端駅間17.4kmの路線となります。終端駅は「国営ひたち海浜公園」の西口前に高架駅として建設され、交通ターミナルとして整備される予定です。同社とひたちなか市は、実現すれば「全国でも前例のない地方鉄道の延伸」と期待しており、事業推進への協力を求めています。
ひたち海浜公園は年間200万人以上が訪れ、「みはらしの丘」の広大な敷地で春に咲き誇るネモフィラは茨城県でも有数のビュースポットとなっています。また、毎年8月に開催される日本最大の野外音楽イベント「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」(2020年は中止)の会場となっており、全国から音楽ファンが集うことでも知られています。同公園へ公共交通機関で行くには常磐線勝田駅からの路線バスなどを利用する必要がありますが、湊線の延伸後は、新しいアクセス手段として来園者の利用が期待されています。
また、終端駅付近には、映画館もあるショッピングモール「ファッションクルーズ ニューポートひたちなか」や大型小売店「コストコホールセール ひたちなか倉庫店」など、広大な駐車場を持つ商業施設が集積しています。これらにマイカーで訪れる地域住民の生活スタイルに、鉄道がどこまで切り込めるかも注目ポイントになりそうです。
ひたちなか海浜鉄道湊線では延伸事業のほかに、平磯駅〜磯崎駅間に新駅「美乃浜学園」(みのはまがくえん)の建設が進められています。ひたちなか市が同名の新しい小中一貫統合校を建設しており、学校に近接した場所に開設されます。単線線路にホーム1面が設置される無人駅で、2021年3月に開業する予定です。なお、湊線には2014年にも中根駅〜那珂湊駅間に新駅「高田の鉄橋」が開設されています。
ひたちなか海浜鉄道は、かつて湊線を運営していた茨城交通とひたちなか市が出資して設立した第三セクターで、2008年に発足しました。茨城交通時代は利用客が減少の一途をたどり廃線寸前にまで陥っていましたが、ひたちなか市の支援に加えてダイヤ改善などの積極運営が功を奏し、運営移管後はほぼ毎年利用客が増加しています。